総合商社株7社 どの銘柄をいつ買うか?

日本株

はじめに

これまで総合商社株に持っていたイメージは、優良企業だが事業領域が広く把握しづらい、業績変動の割に配当が低いというものでした。

取引を敬遠していましたが、業績向上と増配により今や3〜5%の高配当銘柄となっており、改めて購入を検討したいと思います。

三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、豊田通商、双日の7社について事業内容、業績、株価指標を比較しながら、どの銘柄をいつ買うか考えます。

総合商社各社の特徴を捉えて頂くための記事としてお読み頂ければと思います。なお当初記事は2022年8月8日の指標に基づき執筆し、11月18時点の指標を元に加筆しております。

指標比較

まずは主要事業と直近の事業規模です。左から前期純利益額の順に並べています。2023年3月期の会社予想純利益は伊藤忠以外は増益見込みです。


三菱商事三井物産伊藤忠住友商事丸紅豊田通商双日平均
主要事業
(利益上位
3位)    
金属資源、自動車、天然ガス金属資源、機械 、エネルギー金属、住生活、情報金融資源化学、金属、生活不動産金属、アグリ、食品金属、化学エレクトロニクス、自動車金属資源リサイクル、化学、自動車
’22/3売上
(兆円)
17.2611.7612.295.508.518.032.109.35
’22/3純利益
(兆円)
0.940.910.820.470.420.220.080.55
’23/3利益
見込(兆円)
1.030.980.800.550.510.270.110.61

次に2022年8月8日時点の株価指標です。

2022/8/8三菱商事三井物産伊藤忠住友商事丸紅豊田通商双日平均
株価(円)4,1752,9983,8211,890.51,3524,6352,2053,011
時価総額(兆円)6.154.926.062.372.321.640.553.43
PER7.25.98.06.45.87.86.06.7
PBR0.810.821.240.670.890.870.640.85
配当利回り3.59%4.00%3.40%4.76%4.44%3.50%5.08%4.11%
信用倍率11.686.882.408.047.077.0227.9210.14

2022年11月18日時点の株価指標です。各社中間決算後の数値です。

2022/11/18三菱商事三井物産伊藤忠住友商事丸紅豊田通商双日平均
株価(円)4,3483,8364,1702,1701,4645,0702,3963,351
時価総額(兆円)6.416.116.612.722.521.800.603.82
PER6.15.97.64.94.86.65.05.9
PBR0.800.991.250.700.920.950.640.89
配当利回り3.64%3.28%3.25%4.98%4.84%3.43%5.48%4.13%
信用倍率13.291.001.283.249.441.6111.095.85

次に各社の事業の特色を見ていきます。

【三菱商事(8057)】 最強、資源高享受

2021年度で純利益の多い順にセグメントを並べると金属資源 4,207億円、自動車 1,068億円、天然ガス 1,051億円、食品 793億円、電力 505億円、石油化学 403億円、都市開発 400億円、総合素材 368億円、コンシューマー産業 210億円、産業インフラ 173億円です。

金属と天然ガスを合わせた資源が半分を占めることがわかります。うちオーストラリアの原料炭事業が2,706億円を占めます。原料炭価格が600ドル/トンまで急騰したことが理由です。また銅価格も10,000ドル/トン超まで上昇しました。

過去を振り返ると過去最大だった2008年3月期の売上23.1兆円を受けた2008年5月の3,950円が最高値でした。

ところがリーマンショックで2008年11月には923円まで急落します。その後の業績は順調でしたが株価は2020年までは1,000円から3,000円の間で推移しました。直近の2021年から2022年にかけて史上最高益と共に史上最高値を記録しています。

今後も原料炭や銅などの資源価格が高ければ高収益は続きそうです。一方、資源価格はピークを過ぎた可能性があり会社予想も今期は減益を予想しています。

信用倍率は11倍を超えていて、今後景気後退懸念が強まれば株価下落の可能性もあります。個人的には今は割高に感じます。

【三井物産(8031)】 二番手、資源高享受

2021年度当期利益の多い順にセグメントを並べると、金属資源 4,976億円、機械インフラ 1,208億円、エネルギー 1,140億円、化学品 689億円、生活産業 615億円、次世代・機能推進 576億円、鉄鋼製品 269億円です。

直近1年よりも前の最高値は2007年10月の3,180円です。2007年3月期までの増収増益と3年連続の増配で配当が8円から34円まで増えたことが理由と考えられます。2008年3月期も増収増益増配でしたが、リーマンショックで2008年11月に656円まで下落しました。

その後、赤字もありましたが配当は安定していました。2020年まで株価は1,000円から2,000円の間で推移、2021年後半から2022年にかけ史上最高益と最高値を記録しています。

三菱商事と似て金属とエネルギーが利益の約半分を占めます。主要因としてはやはり豪鉄鉱石価格と豪石炭価格の上昇が挙げられています。今後、資源価格が下落する可能性を考えると現時点ではやはり割高に感じます。

【伊藤忠商事(8001)】バランス型、非資源も強い

2021年度純利益の多いセグメント順に並べると、金属 2,260億円、住生活 1,056億円、情報金融 1,043億円、エネルギー化学 896億円、食料 590億円、ファミマ 490億円、繊維 251億円です。

過去の株価推移は、リーマンショック前の最高値が2007年7月の1,591円で、2008年10月にリーマンショック後の最安値380円をつけました。その後は今年3月の史上最高値4,249円まで右肩上がりでした。

利益に占める資源の比率は3割以下で、非資源の事業で幅広く利益を上げています。利益率は低い一方で資源価格の下落に強いといえます。

会社予想は今期減益ですが8期連続で増配の予想です。上記二社と比べ利益の安定性が高いと期待できます。

【住友商事(8053)】資源高を享受、非資源は変動

2021年度当期利益の多いセグメント順に並べると、資源・化学品 2,473億円、金属 552億円、生活・不動産 440億円、メディア・デジタル 394億円、輸送機建機 349億円、インフラ 333億円です。

資源が6割超で他社と比べて最も高い比率です。特に2020年度はセグメント別で黒字だったのはメディア・デジタルのみでした。今後、資源価格が下がれば収益も大きく下がる懸念があります。

過去の最高値は2007年7月の2,445円です。増収増益増配で買われたと推測できます。リーマンショックで2008年10月に556円まで下落しました。その後2021年に至るまで1,000円から2,000円の範囲で推移しています。

非資源事業の利益が安定しないこともあり、現時点では購入は見送ります。

【丸紅(8002)】 資源高享受、アグリ・食料品も強い

2021年度純利益の多い順にセグメントを並べると、金属 1,907億円、アグリ 708億円、食品 499億円、エネルギー 377億円、航空船舶 277億円、建機産機 254億円、化学品 172億円、林業 76億円、ライフスタイル 18億円などです。

豪鉄鋼原料、鉄鉱石、チリ銅事業による金属とエネルギーが利益の半分を占めます。他にアグリと食品が約3割を占めるのが特徴です。

過去の最高値は2007年7月の1,212円です。2007年3月期が3期連続の増収増益増配だったことが好感されたと推測できます。

リーマンショックで2008年11月に260円まで下落しました。その後2020年までは400円から1,000円の間で推移、2021年から2022年にかけ市場最高益と最高値を記録しています。

【豊田通商(8015)】自動車とアフリカがユニーク

2021年度の本部別の純利益を多い順に並べると、金属729億円、化学エレクトロニクス430億円、自動車265億円、グローバルロジスティックス256億円、機械エネルギー212億円、食料生活54億円です。

トヨタグループの総合商社です。詳細はわからないものの金属、化学、エレクトロニクス、自動車、グローバルロジスティクスの各分野で多かれ少なかれトヨタ自動車の事業と結びついていると推測できます。またアフリカでの売上が大きいのもユニークな点です。

株価は過去から一貫して右肩あがりです。増収増益増配が続いていることを反映しているようです。リーマンショック前の最高値は2006年10月の3,620円、次の最高値更新は2018年1月の4,905円、直近の最高値更新は2021年11月の5,660円と、他の総合商社とは違う値動きです。

【双日(2768)】売上利益の規模が小さい

2021年度に純利益の多い順にセグメントを並べると、金属・資源・リサイクル 341億円、化学 126億円、自動車 71億円、インフラ・ヘルスケア 66億円、生活・アグリ 64億円、リテイル・コンシューマ 50億円、航空・交通 47億円です。

過去最高値は2003年10月の3,970円。ニチメンと日商岩井の合併した直後でした。そこから株価は低迷しています。過去最安値は2012年10月の475円です。

やはり約4割が資源関係ですが、利益の規模は他社より小さいです。

資源価格の影響

これまでみてきたとおり石炭、鉄、銅価格が総合商社の収益に大きく影響します。過去の価格推移について触れておきます。

石炭(トン):2002年の20ドル台から2007年60ドル台まで上昇。2008年急上昇し120ドル台、2009年60ドル台に戻る。2011年に120ドル前後に上昇、2015年に50ドル台に下落。2020年60ドル台、2021年120ドル前後、2022年300ドル前後。

鉄鉱石(トン):2002年の30ドルから2006年に70ドルまで上昇。2007年が120ドル、2008年が150ドルに上昇。2009年が80ドルに下落。2011年に160ドル、2015年に50ドル台に下落。2021年6月に210ドル、2022年7月に110ドルまで下落。

銅(トン):2002年の1,500ドル台から2007年7,100ドル台に上昇。2009年5,100ドル台、2011年8,800ドル台、2016年4,800ドル台に下落。2021年に9,300ドル台、2022年3月・4月に10,000ドルを超えていたが、7月に7,500ドル台。

石炭は上昇中ですが鉄鉱石と銅は2021年以降に最高値をつけた後下落しています。世界的な景気後退と関連して更に下落する可能性も想定しておきたいです。

まとめ

各社とも石炭、鉄、銅価格により収益が大きく影響を受けます。今後の業績は資源価格次第とも言えます。

個人的には8月8日時点の株価は割安ではないと判断し、購入は見送りました。11月18日時点では中間決算を織り込み、更に株価は上がっています。やはり割安ではないと判断します。

現在の好業績と株価上昇には乗り遅れたと諦めて、1年ほど資源価格の動向を見てから買おうと思います。

その場合の銘柄としては資源株上昇を狙って三菱商事、バランス良く安定成長することを狙って伊藤忠商事の二社を考えています。

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