株式スクリーナーと逆指値の取引記録

試してみた

オンライン証券のWebサイトなどにある株式スクリーナーを使うことによって、日本の4,300銘柄、米国の5,300銘柄を好みの条件で絞りこむことができます。

筆者は、絞り込んだ銘柄のIR情報を確認するとともにチャートを見て買い時と思えば購入しています。スクリーニングの指標と実施例を1、2項に記載しました。

また、過去の反省として、スクリーニングをしなかった取引を3項に、ファンダメンタルではなく信用取引でのスキャルピングの経験について4項に記載しました。

また2022年9月以降の取引では、予想が外れたら自動で損切りするよう予め逆指値で発注しています。損切りラインは過去の安値や移動平均からここを割れば更に下がるであろうという金額を予想します。過去の逆指値の発動結果を5項に記載しました。

スクリーニングの指標

指標を筆者なりに重視する順に表にしました。1〜7は割安銘柄発見、8位〜10位は成長性確認、11位以下は同業比較などに用います。

指標観点  内容基準   
0時価総額規模市場からの総合評価、他の指標を見る際に意識
1営業利益率収益性営業利益÷売上10%以上
2配当利回り収益性 年間配当額÷株価3%以上
3売上収益性利益と成長の源泉首位・増収
4海外売上比率収益性海外売上高÷全世界売上30%以上
5自己資本比率安定性株主資本÷総資産30%以上
6PBR割安性Price Book-value Ratio(株価純資産倍率)=株価÷一株純資産(BPS)、株価が解散価値の何倍か、1以下は割安1倍以下
7PER割安性Price Earnings Ratio(株価収益率)=株価÷一株当期純利益(EPS)、低いと市場から過小評価されている可能性10倍以下
8ROE効率性Return on Equity(自己資本利益率)= 当期純利益÷株主資本 = PBR÷PER10%以上
9ROA効率性Return on Asset(総資産利益率)=当期純利益÷総資産5%以上
10配当性向成長性配当÷株主に帰属する当期純利益、株主への還元と成長への投資のバランスを示す50%以下
11PSR割安性Price to Sales Ratio(株価売上高倍率)=時価総額÷年間売上 売上で全株を買うのに必要な年数、同業比較の目安1倍以下
12EPS収益性Earnings Per Share(一株当期純利益)= 当期純利益÷発行済株式数、 配当の原資、PER算出の分母多い方が良い
13営業CF収益性本業で収益がある、スタートアップ等の事業成立を確認するプラス
14EBITDA収益性Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization 税・償却費除く単年の事業利益プラス
15ネットDEレシオ安定性NET Debt/Equity Ratio (有利子負債-現預金)÷株主資本最大1

スクリーニングの実施例

米国株、割安高配当(2023/10/15)

条件:PER15以下、PBR1.5以下、時価総額10億ドル、ROA6%以上、実績配当利回り・予想配当利回り6%以上、自己資本比率30%以上、

結果8社:コード・エナジー(CHRD)は原油・天然ガス生産・調査会社。チャートは右肩あがりで高値更新中、購入検討ステランティス(STLA)は世界4位の自動車会社。ユージーアイ(UGI)は米国のガス会社。

米国株、成長中(2023/10/15)

条件:対前年経常利益成長率30%、ROE実績8%、予想売上高成長率15%、予想売上高当期純利益率15%、自己資本比率40%、予想EPS長期成長率10%、時価総額50億ドル

結果6社:アルベマール(ALB)は化学品メーカー。リチウムイオン電池素材のリチウム最大手。EV市場に合わせた成長期待。チャートは三尊形成に見えるため様子見。

日本株、割安高配当(2023/10/9)

条件:PER10以下、PBR1以下、配当利回り3%以上、営業利益率10%以上、自己資本比率30%以上、海外売上比率30%以上、過去3年売上高成長率5%以上、時価総額100億円以上

結果7社: INPEX(1605)はSNSで話題。指標の上ではまだ割安。一旦急落したところなので、様子を見て買いに行きたい。

日本株、成長期待(2023/10/9)

条件:営業利益率10%以上、ROE10%以上、過去3年平均成長率10%以上、海外売上10%以上、PER15以下、PBR1.5以下

結果6社: 大阪チタニウムテクノロジーズ(5726)は高品質のチタンで世界首位。TVの経済番組でも取り上げられた。チャートはまだ上がりそう。お気に入り登録し購入を検討。

日本株、成長期待(2023/9/29)

予想PER10倍以下、PBR1.2倍以下、海外売り上げ比率30%以上、営業利益率15%以上、配当利回り3%以上、東証プライム銘柄でスクリーニングしたところ、以下3社が該当。

INPEXは大幅値上がり中の人気銘柄であり一旦保留。残り2社は日本の得意分野、工作機械メーカーのスター精密ツガミ。いずれもCNC旋盤が主力商品で、1,000億円弱の売り上げ。

時価総額はスター精密が大きいが売り上げと営業利益率はツガミが大きい。連続増配中で、配当利回りも4%超と高利回り。11月末までに予定している自社株買いも予定額に達していない模様。

中国売り上げが過半を占めるのは懸念材料だが、インド投資は好感。過去1年のチャートは1,070円で反発。1,060円を売却ラインとしてツガミを購入。

日付取引理由取引価格損切設定
2023/9/29購入4%の高配当、自社株買いによる上昇期待1,159円年間の下値1,060円
2023/10/31売却瞬間的にラインを割り自動売却1,060円

スクリーニングなしの取引を反省

大相場後の値頃感で購入 Cyberdyne(7779)

CYBERDYNE社は2004年創業の筑波大学発のロボットベンチャー。神経からの電気信号を拾って筋肉の代わりに動く装着型サイボーグ”HAL”の販売とレンタルが主要事業。

医療用として足腰の動きを繰り返して脳に刺激を与え、脳卒中や脊椎損傷で失われた動きの回復を助ける。パワーアシストスーツとしても介護施設や倉庫など重量物を扱う作業に対応。

2014年の上場当初は世界初の技術として多額の資金を集め2016年には過去最高値の2,629円。その後赤字が続き、下落した2019年から購入、塩漬けして最後に損切り。

時期取引理由
2019 〜2021下落時に購入、平均価格は480円Youtubeで身体機能回復支援に意義。アジア・欧米展開に将来性。大和ハウスが大株主で安心感。ピーク時株価・公開時より低価格。赤字だが増収中、黒字化で値上がりありうると判断。
2022/9350円と308円で損切りチャートを勉強し始め、下降トレンドと判断。過去2年間の保有は結果的に”塩漬け”と認め売却、損失を計上。

IPOだから安直に購入 Medilines (MEDIC)

Medilines Distributors Inc.はSiemensのMRIなど大型医療機器のフィリピンにおける卸売業。著名政治家Manny Villar氏の弟Virgilio Villar氏が創立者。

2021年12月にフィリピン証券取引所に公募価格2.30ペソでIPOした際に事業内容、財務内容、IPOの目的を理解せず購入。上場当日に1.6ペソ台に下落、その後も下落続き。下落の理由も不明だが惰性で保有。

2022年6月に当初の3分の1を割りこんだところでこのままだとゼロになるかも知れないと危機感を持ち0.57ペソで売却

”インバウンド”と安直に購入 カーニバル(CCL)

米国のクルーズ船旅行会社カーニバルは、コロナ前は売上200億ドル、営業利益30億ドルを超え、株価も40〜60ドルで推移したがコロナ禍で2021年度売上は10分の1まで落ち込み。

2022年に欧米で外出制限がなくなったのを機にリバウンドを期待し、2022年3月17.2ドルで購入も値下がりが続き6月には8ドルまで下落。9月に財務を確認すると有利子負債が70%を超え営業赤字継続。利上げに不安を感じ9.45ドルで売却。

結果的に2022年度は売上120億ドルまで回復し、株価も2023年10月で13ドルを超えているので損切りも失敗。少なくとも購入前にBSとPLを見るべきと反省。

安直に二匹目のドジョウ ラオックス(8202)

2014年頃インバウンドについて羅怡文社長(当時)の講演。秋葉原で十万円の南部鉄器があっさり売れると日本製品への需要を熱意を持って説明。即、株を購入したところ7倍に値上がり、下げ始めたところで利益確定、頭から尻尾まで取れた。

一回目で味をしめ、東京五輪前の2019年に280円で購入したが、インバウンドはもはや当たり前で、老舗デパートや大手家電量販店などと競争が激化。コロナが追い打ちで赤字決算、株価も半減、180円で損切り。情勢を再確認すべき。

信用取引・スキャルピングも一応試したが苦手

時間が取れた平日に、経験として初めての信用取引を試してみた。信用取引用の口座を予め開設し、取引に使う現金50万円を用意。信用余力は3.3倍で約165万円分の売買ができる。

取引銘柄は、現物株を保有し、事業や財務内容を知っている日本製鉄(5401)を選んだ。プライムの大型株なので出来高が期待でき、極端な値動きもないものと考えた。165万円の余力なので2,200円台の株価で最大700株まで取引可能となる。

値動きを追うため楽天証券の取引ツールをデスクトップで開いた。板情報と注文入力画面で1ウィンドウ、歩み値で1ウィンドウをデスクトップに、チャートで1ウィンドウを拡張ディスプレーに開いた。チャートは1分足は忙しなく見えるので3分足をメインにする。

現物の注文と違う点として、買か売か、制度信用か一般信用かを選ぶ必要がある。特に買建と売建は良く確認する。

1日フリーで、前場、後場とも好きな時間帯に参加できた。寄り前の日本製鉄を確認すると買いが優勢で地合いは良さそう。寄り付きは様子を見て落ち着いてからエントリーすることにした。

日本製鉄は前日終値2,226円に対して寄り付きは2,239円で、2,258円まで上昇。9:30過ぎに2,240円台に戻ったところでエントリーのタイミングを探す。

予想と反した動きをした時点で損切りすることを肝に銘じて開始した。買い建てを4回、売り建てを2回、合わせて6回の取引を実施。トータルで100円の損失だった。手数料が4,070円かかったので1日で4,170円のマイナス。

注文時売買取引の理由約定[株]注文単価[円]約定単価[円]約定代金[円]損益[円]手数料[円]
買①09:36買建寄りの高値2,258から下落、反転と見た1002,248.02,248.0224,800-198
09:41売埋再度下落した100成行2,246.5224,650-150-198
(良い損切り)
買②09:46買建2,243を底に反転と見た1002,245.02,245.0224,500-198
09:49買建上昇続くとみて買い増し100成行2,247.0224,700-198
10:21売埋2,254で数分足踏みの後下がったので売り200成行2,252.0450,4001,200-198
(理想の取引)
売①10:31売建2,255まで上昇後下がり始めたので売り400成行2,253.0901,200-385
10:35買埋急上昇し始めたので買い戻し400成行2,256.5902,600-1,400-385
(2,259への上昇から逃げたが少し遅い)
買③12:34買建後場よりから上昇トレンドとみて購入6002,271.02,271.01,362,600-385
12:53売埋上髭後に下がったので売却600成行2,274.01,364,4001,800-385
(実は一瞬の押し目で2,281まで上昇)
売②13:29売建2,281のダブルトップ後膠着とみた6002,279.02,279.51,367,700-385
13:39買埋上昇し始めたので買い戻し600成行2,281.51,368,900-1,200-385
(2,283まで上昇、良い損切り)
買④13:59買建歩み値を見て大口買いが増えたと見た7002,280.02,280.01,596,000-385
14:29売埋2,283まで上げたが下落に転じたので売却700成行2,279.51,595,650-350-385
(2,276まで下落、利確逃したが損切り)
損益合計-100-4,070

気づいた点は以下の通り。

  1. 予想と逆に動いたらすぐに売るのは概ね上手くいった。1円分は躊躇いがあったので、もっと早くても良い。
  2. 地合いの影響が大きい。今日の場合は、買いの方が容易に取引できた。
  3. エントリーのタイミングを決めるには、数分から数十分の単位での上昇、下降トレンドを判断する必要。
  4. 1分または3分足のチャートの見方に慣れる必要。また、歩み値からは大口の注文に、小口の注文が追随する傾向が見える。歩み値と板を見比べて方向を予想する練習をする。
  5. 手数料がバカにならない。利益を出すには10倍程度の金額で行うのが望ましい。
  6. 「売埋」、「買埋」の埋は埋(う)めると知った。理科の理と勘違いしていた。

150万円程度の売買を複数回行って−4,170円と取引結果は平和であった。丁半博打の域を出ていない。経験としての価値はあったが、コンスタントに利益を出すのは難しいと感じた。

逆指値による自動損切りの実践、ライン設定に改善余地

2022年9月以降に実践した逆指値による自動売却の履歴。12銘柄中10銘柄が売却。うち6銘柄は自動売却後値上がりしたので損切りは時期尚早。2銘柄のみ損切りは成功といえる。

銘柄購入根拠と平均購入価逆指値の根拠と金額売却評価(12/10時点)
ANA HD
(9202)
22/1月インバウンド期待で平均2,414円当初2,540円、上昇トレンドと見て2,667円まで引き上げ10/3益出し2,666円現2,903.5円なので早過ぎ
H20リテ
(8242)
22/1月インバウンド期待で平均813円9月初初75日平均980円、後に1,060円まで引き上げ10/3益出し1,058円現1,190円なので早過ぎ
力の源HD
(3561)
22/1月インバウンド期待で平均580円当初664円、上昇トレンドと見て755円まで引き上げ9/28益出し754円現954円なので早過ぎ
レノバ
(9519)
22/3月長期的には割安と見て平均1,637円ポリンジャーバンドを出たので3,500円で設定9/20益出し3,554円現2,613円なので成功
カルビー
(2229)
22/6月長期的には割安と見て平均2,589円当初2,674円、上昇に伴い2,999円に引き上げ10/3益出し2,997円現3,020円なのでどちらともいえる
ナブテスコ(6268)22/8月精密減速機世界トップに惹かれ平均3,075円7/27安値の2,972円9/26損切り2,971円現3,470円なので早過ぎ
PKSHATEC(3993)22/8月増益と将来性に期待し平均2,275円9/21安値の1,791円10/3損切り1,792円現1,770円なのでどちらともいえる
キヤノン
(7751)
22/9月配当3.5%上昇トレンドと見て平均3,302円直近安値
3,228円
10/11損切り3,223円現3,112円なので成功
ヤマハ発
(7272)
22/9月高配当4.0%、ボックス圏と見て平均2,857円当初2,690円、地合悪化と見て2,786円まで引き上げ9/26損切り2,786円現3,315円なので早過ぎ
商船三井(9104)22/9月配当300円をもらうため平均3,105円直近安値から300円を減じた2,588円で設定9/30損切り2,587円現3,265円なので早過ぎ
日本製鉄
(5401)
高配当6.56%でボックス圏平均2,147円2021年12月安値を割る1,690円保有中
東ソー
(4042)
好業績高配当4.7%一時下落中と見て平均1,530円2020年3月の直近最安値1,012円12/19益出し1,607円2023/11/17
1,956円なので早過ぎ

握力弱い ANA(9202)

コロナ前は3,500円を超える株価。2022年1月にコロナも収束に向かうだろうという期待から2,410円で購入。順調に値上がりしたが、2,666円で売却ラインを割り、益出しとなった。

その後も上昇傾向にあり、2023年1月23日終値が2,872円。注目されている銘柄だけに値動きも大きかった。売却ラインを狭く設定しすぎたのが反省点。

握力弱い H2Oリテイリング(8242)

「コロナが終息し観光客の訪日が再開すればの受け入れ急上昇するだろう、株価は、過去10年のチャートで平均以下=下がっても半額までいかないだろう」と810円で購入。

売却は一応チャートを見て設定した売却ラインをわり1,058円で益出しした。2023年1月23日終値が1,254円まで上昇。売却ラインを狭く設定しすぎたのが反省点。

握力弱い 力の源HD(3561)

力の源ホールディングスは一風堂を主力ブランドとして国内外で展開。「印旛うどん」などと合わせ国内142店舗、海外15カ国に136店舗。内訳は米12、中28、台15、タイ19、比11、シンガポール11、マレーシア10、英4、仏3など。

ニューヨークのIPPUDO NYでは「赤丸新味」が一杯19ドル、円換算で2,800程。日本の倍以上の価格でも大人気で2008年の初出店から4店舗まで増加。

競争の厳しい日本で磨かれたラーメンを、メインディッシュとして現地の相場に合わせて高価格帯で提供している。店内飲食以外に持ち帰り、宅配、調理用の外販も行なう。

過去4期の業績と配当は以下のとおり。2022年8月時点で利益剰余金の増加から復配の可能性を予測できていたにも関わらず、わずか754円で益出し。2023年11月時点で1,734円。ライン設定が浅すぎた。

売上営業利益配当
2020年3月期291億円(過去最高)7.0億円4円
2021年3月期165億円-9.8億円(赤字)無配
2022年3月期194億円10.5億円無配
2023年3月期261億円22.8億円15円

いずれも、反省点は売却ラインが浅過ぎたことです。1年単位で保有するなら1年単位での安値を考慮とすべき。依然改善の余地あり。

まとめ

銘柄の選択と取引時に実践している内容を書き出してみました。指標スクリーニングは、過去の反省も踏まえ、今後も継続します。

信用取引を用いたスキャルピングは、時間と労力に応じた利益をあげられる自信がないため、積極的には行いません。

逆指値の自動売却は、防御のために有効だと理解しますが、売却ラインの設定は銘柄毎に将来の値動きを想像することが必要であり、当面はかなり深めに設定すべきと考えを改めたところです。

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