(注)1ペソ=約2.5円で記載しています。
フィリピン最強の外食ブランド
フィリピンに行かれた方は赤と黄色のキャラクターを目にしたことがあると思う。一見ミッキーマウスっぽい顔で頭に触覚、お腹は赤と黄色の縞々で背中に羽がある。そう蜂=Beeがモチーフなのだ。
そのキャラクターがいる店の名はJollibee(ジョリビー)、フィリピン最大のファーストフードチェーンである。Jollibee Foods Corporation(証券コードJFC)が運営する。
フライドチキン、ハンバーガーの他、バナナケチャップを使った甘いスパゲッティで子供や家族連れの人気を博している。
1975年にアイスクリーム屋さんとして創業、1978年にハンバーガーショップを始め、フランチャイズ方式で拡大してきた。
40年以上の歴史があり、若者の多いフィリピンではほとんどの人の記憶に残っている。フィリピンの友人曰く、幼少期にJollibeeでお祝いをした記憶が残っており、大人になっても外食や祝い事ではついJollibeeをイメージするそうだ。
国内外に1,500店以上展開しており、海外はアメリカ、カナダ、香港、マカオ、ブルネイ、ベトナム、シンガポール、マレーシア、サウジアラビア、UAE、カタール、オマーン、クウェート、バーレーン、イタリア、スペイン、イギリスなどに270店以上出店している。
いずれもフィリピン人の海外労働先としてメジャーな地域だ。各地にいる1,000万人近いフィリピン人達を顧客と見込んでいる。2015年に日経新聞で日本進出の計画も報じられたが2022年時点で具体的な計画はないようだ。
主力ブランドJollibeeの他、ミシュラン一つ星のTimHoWan、The Coffee Bean & Tea Leafなどの海外ブランドを傘下に収め、国内外で積極展開している。
ブランド名 | メニュー | 地域 | 備考 |
Red Ribbon | ケーキ | 比 | 独自ブランド |
Chowking | 中華 | 比、中東、米 | 独自ブランド |
宏状元 | 中華粥 | 中 | 独自ブランド |
Yonghe King | 中華 | 中 | 独自ブランド |
Mang Inasal | ローストチキン | 比 | 独自ブランド |
Greenwich | ピザ | 比 | 独自ブランド |
Tortazo | ステーキ | 米 | 独自ブランド |
Smash Burger | ハンバーガー | 米 | 独自ブランド |
The Coffee Bean & Tea Leaf | カフェ | 比、米 | アメリカ親会社を保有 |
Tim Ho Wang 添好運 | 点心 | 中 | シンガポール親会社Titanを保有 |
PHO24 | ベトナム料理 | アジア | ベトナム親会社SuperFoodsの6割保有 |
Hilands Coffee | カフェ | アジア | ベトナム親会社SuperFoodsの6割保有 |
吉野家 | 牛丼 | 比 | 吉野家と50:50号弁 |
Burger King | ハンバーガー | 比 | フランチャイズ |
Dunkin’ | ドーナツ | 中 | フランチャイズ |
筆者もJollibeeとGreenwichを現地のお店で食べてみた。ファストフードとして、味も店内の環境も高水準に保たれている。
フライドチキン・ライス・ドリンクセットが79ペソ(約200円)、ハンバーガー・ポテト・ドリンクセットが59ペソ(約150円)と安価。競合と比べてコストパフォーマンスが高いと思う。
比国内でJollibeeのフランチャイズ店を開くには、35〜65百万ペソの自己投資が必要だ。人気に裏打ちされた強気の価格設定に感じる。
直近の業績と株価
2021年12月期は2020年12月期と比べて売上、利益とも回復した。
- 売上は1,465億ペソ(約3,660億円、前年比+18%)
- 純利益は55億ペソ(約137億円、前年比+181億ペソで黒字転換)
コロナ前の2019年12月期の売上1,703億ペソ、純利益64億ペソにはまだ及ばない。
ただ2021年前半はフィリピン国内で飲食店の店内飲食や、児童のショッピングモール立ち入り禁止などの制限があった。2021年後半も限定的ながら移動制限が続いたため、まだ業績への影響が残ったと言えそうだ。
2022年に入るとフィリピン国内でもほぼ移動制限の影響がなくなった。2022年12月期は更なる回復が期待できる。
株価もコロナの影響を受けだ。
コロナ前は、2019年1月に史上最高値の324ペソをつけた。2020年3月のコロナ初期に直近の最安値91ペソに下落後、年末に200ペソ台を回復した。
コロナ後の最高値は2021年11月9日の259.80ペソ、その後2022年6月17日に192.00ペソまで下落したが11月12日の終値は234.80ペソまで回復している。
過去からの配当を振り返ると、配当利回り1%前後と決して高くはないが、安定している。2022年は4月が1.07ペソ、11月が1.23ペソとそれぞれ増配された。
4月配当(ペソ) | 11月配当(ペソ) | 年間計(ペソ) | 年末株価(ペソ)※ | 配当利回り | |
2018年 | 1.14 | 1.34 | 2.48 | 290.79 | 0.85% |
2019年 | 1.23 | 1.35 | 2.58 | 215.25 | 1.20% |
2020年 | 0.62 | 0.68 | 1.30 | 193.30 | 0.67% |
2021年 | 0.78 | 0.89 | 1.67 | 223.00 | 0.75% |
2022年 | 1.07 | 1.23 | 2.30 | 234.80 | 0.98% |
2021年12月期のバランスシートは負債・資本総額が2,108億ペソだ。うち株主資本は558億ペソ、永久債が202億ペソで、自己資本が742億ペソ、自己資本比率は35.2%である。
日本の大手飲食チェーンの自己資本比率が軒並み50%を超えていることと比べると安定性は高いとは言えない。また、流動負債は458億ペソで流動負債/自己資本比率も61.7%とやはり安定性は高いとはいえない。
とはいえ個人的には投資を躊躇うほどの水準ではなく積極的に店舗展開していることの表れと捉えている。
取引記録
購入(2021/1〜)
2021年から買い始め、平均購入価格が209.95ペソだ。
様子見(2022/11/13)
11/8の増配発表後、11/12日の終値が238.40ペソです。フィリピン国内の人流の本格化が売り上げに寄与する一方で、ペソ安と小麦の値上がりが原価に悪影響と予想される。
追加購入も視野に入れながら、業績を見守りたい。
まとめ
フィリピン国内の飲食チェーンとしては圧倒的なブランドを築いている。一方、一般的に飲食店は競争が激しく利幅を増やしにくいことや、原価高騰の影響を受けやすいことは留意点だ。
国内市場は引き続き成長が期待できることと、積極的な海外展開により事業規模を拡大していくことに期待したい。
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